海外でで通用する CG英会話ブログ


2011年5月9日月曜日

「ハリウッドVFX業界就職の手引き」をご存知ですか??

今回は、少し趣向を変えてある本の紹介である。
当ブログを読んでいただいている方々は少なからず海外の情報にも興味が有るのではと思い、今回は書かせていただこうと思う。

「ハリウッドVFX業界就職の手引き 2011年度版」

VFXジャーナリストの鍋潤太郎氏(CGWORLDの連載「海外で働く日本人」の記者と言えばお分かりの方もいるのでは?)と、溝口稔和氏の共著を献本していただいたので、この本について紹介してみたい。

まず、ハッキリ言ってしまおう。
このCG英会話で英語を話せるようになった「だけ」では、アメリカに渡って仕事を得ることは「出来ない」であろう。
なぜならば、その為には「アメリカで就職を勝ち取る事」そして「労働の為のビザを取得する事」が必要だからである。

今回紹介するこの「ハリウッドVFX業界就職の手引き」には冒頭から日本ではあまり知られていないアメリカ移民法に関する(人によっては)ショッキングな言葉が並ぶ。

「(アメリカ企業への)採用=ビザが保証されるという訳では決してありません。」

「(ビザの)申請資格に該当していないと、どんなに優秀で、意中のプロダクションに採用されても、就労ビザ申請が却下され入社することが出来ません。」

そうなのだ。実際、アメリカでアーティストとして仕事を始めるには、

「アメリカ企業で仕事の内定をもらう」

「アメリカ政府にビザを申請し、発行してもらう」

という二つの手順を踏まなければならず、大袈裟ではなく、アメリカの就労ビザに関する規定はかなり厳しいのだ。


筆者が書くように、

「よくドラマや映画に登場する「とりあえず渡米して、アルバイトしながら食いつないで、アメリカン・ドリームを実現する」という事は、現実には不可能であり、コレを実行すると大変な不法行為となってしまうということを、よく確認しておく必要があります。」

というのが、実は現実である。

しかし、それでは日本から就職したい人達にその道はないのか?
ここで筆者は、「だから難しい」ではなく「では、どうすればいいのか?」という視点を与えてくれる。

「では、どのような申請資格が必要なのか、簡単に説明してみましょう。」

そしてアメリカでビザを取得するための方法を、実際に就職に成功した人の実例を交え事細かく説明してくれる。

日本の現場から直接海外の現場に行く為に必要なこと、準備すること、
アメリカへ留学しCGを学ぶ時の注意点、学校の選び方など、大変実践に即した形での説明が並ぶ。
ちなみに、自分がアメリカで就職した経緯もこの一つと同じである。
(自分はアメリカで総合4年制大学を卒業後、VISAを確保、業界に就職)

アメリカで就職する、という事の厳しい現実を筆者がキチンと突きつけることは、裏をかえせばこの本がいかに真実を伝えているか、という事の表れである。
これら移民法に関する部分は、アメリカの移民弁護士をアドバイザーとして迎えており、実際にすでにアメリカにいる自分も大変勉強になった。

ちなみに、今回の2011年度版では、新たにアメリカ以外の国カナダ、イギリスのビザ事情も実際のビザ取得体験談が書かれており、アメリカしか知らない自分には為になる情報であった。

もちろん、この「ハリウッドVFX業界就職の手引き」はビザ取得の手引書だけではない。
ここからは、皆も気になる「アメリカのスタジオで就職を勝ち取る方法」に移る。

ここでは、まず

第五章「日米CGプロダクションはここが違う!」

と題され、分業制とはどんな物か、残業/徹夜作業の有無、気になる給料の日本とアメリカの違いがリストされている。
少し抜き出してみよう。

「欧米のスタジオの多くはクルーの給料を時給で計算し、「週に何時間アーティストを働かせるか」で予算を算出します。」
「その関係から、スタジオは可能なかぎりクルーに残業をさせない傾向にあり、残業をしたい場合は事前に届出をして、上司の許可を得ないと残業できないようになっています。」

これも、もちろん自分の経験から言ってもその通りである。
もちろん残業がない、という意味ではなく、残業があってもそれに見合った残業代が出る事が徹底されている。

そして、この後がこの本のキモとも言える

第七章 「ハリウッドでの就職活動」

である。
ここでは、この章の見出しをそのまま紹介してみたい。

第七章 「ハリウッドでの就職活動」

  • どのような人材が求められているか
  • ハリウッドで推奨される、デモリールの作り方
  • デモリールに音楽を入れる場合
  • アメリカのCG就職、べからず集(これだけはしてくれるなコーナー)
  • 応募者に対して、インタビュー(面接)の際に尋ねられる事
  • インタビューの際に気をつける事
  • 電話面接の対策
  • もし採用されたら、どのようにすれば良いのか?
  • 応募する際に気をつける事は?
  • 応募の際、嫌がられるのは?
  • カバーレター(自己紹介文)について
  • レジメ(履歴書)の書式
  • ポートフォリオ(ドローイングやペインティング、等)
  • これからの時代、CGの人材に求められる項目ベスト8は
  • 日ごろ心がけると良いこと
  • ビザの制約を考慮する
  • シーグラフを利用して応募する
  • 留学→卒業した場合、なるべく多くの会社に応募してみる
  • 返事が来ないことはザラ、半年後にようやく返事が来ることも
  • 各社の採用状況をどうやって調べるか
  • 「募集している時」に応募するのが効果

どうだろうか、この章だけでも読んでみる価値があるのではないだろうか?

実は、私自身日本で、アメリカのスタジオについて、またはアメリカで就職する方法について講演をする事があるのだが、
講演内の1,2時間という限られた時間の中で、ここに書かれているような全ての事を説明するのは難しい。

そういう意味でも、この「ハリウッドVFX業界就職の手引き」を一度読んでみることを大変お勧めしたい。

唯一惜しむらくは彼らが自費で出版していることもあり、値段が¥8000と少し高い点だ。
が、最近この通常ペーパー版の他にiPad、iPhone等でも読める電子書籍版が発売されたとの事。
しかもコチラは半額以下の¥3980である。

もちろんこの値段を高いと思うか安いと思うかは皆さん次第であるが、殆んどの人にとって、「今まで知らなかった情報」が詰まっている事は間違いないと思う。
特に明確に海外を目指していることを考えていない人でも、世界のVFX業界の現状を知っておくため、自分の可能性を考えてみるためにも、一度読んでみると良いのではないだろうか。


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