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2011年2月1日火曜日

CG英会話 特別編:"LA Times -アメリカVFX業界の危機" 日本語訳

2011年2月1日付けのLos Angeles TimesにカリフォルニアのVFX(Visual Effects/視覚効果)業界の現状についての記事が載っていました。
普段のCG英会話とは違う趣旨ですが、せっかくなので、「特別編」と題して日本語訳をしてみました。

"California visual effects firms facing a bleak landscape"
「カリフォルニアのVFX業界は干からびた大地に直面している」

翻訳しながら少し暗澹たる気持ちにもなってきましたが、ぜひ御覧ください。
現在、CG/VFX業界の世界で起きていることです。

元記事リンク:California visual effects firms facing a bleak landscape

「カリフォルニアのVFX業界は干からびた大地に直面している」

11年もの間、Nathan McGuiness(ネイサン マクギネス)はカリフォルニア州にある彼のVFX会社を成功に導いてきた。
彼の会社、Asylum Visual Effectsは、"The Curious Case of Benjamin Button"の第二次大戦期の潜水艦を使った戦闘シーン、ニコラス・ケイジ主演の"The Sorcerer's Apprentice"に出てくるドラゴン、そしてSam Worthingtonの"Terminator Salvation"に登場する生々しい人工生命体を手がけてきた。

しかし、これら素晴らしいクレジットやアカデミー賞ノミネートという輝かしい功績をもってしてさえ、彼のビジネスが上昇することはなかった。
オフィスの家賃を支払うこともままならず、McGuinessは100人近い従業員をレイオフし、昨年末、その歴史に幕を閉じた。

「私たちはよくやってきた。効率を追求し、クオリティも保ってきた。しかし、海外の外注勢力にはどうしても勝てなかった。」

オーストラリア出身の彼は、こう語った…。



実写映像にコンピュータを使って特殊効果を与えるパイオニアであったはずのカリフォルニアのVFX産業は、今や四面楚歌の状態にある。

ここ3年の間に、6つのVFX会社が廃業に追い込まれた。
その内3つはLos Angeles市内の会社であり、年俸$75,000から$150,000の数百人のハイテクVFXアーティスト達が職を追いやられた。

カリフォルニア州のデータによると、VFX産業の中心地であったLos Angeles市では、VFXとポスプロ業界から1000以上の職が、この10年で消滅している。

映画製作における視覚効果(VFX)は、撮影用小道具、アニマトロニクス、模型といった物が長年使われてきた。
(Star Warsのクレジットと共に頭の上に突然現れる巨大な戦艦を思い出して欲しい)しかし昨今、これらの殆んどはコンピュータ上の制作物に置き換えられている。
3Dモデリング、コンピューターアニメーション、コンピュータグラフィクスの技術をもった数多くのデジタルアーティストに支えられ、テクノロジーは最新の映画製作に欠かせない手段となった。

しかし、"Avatar"や"Tron: Legacy"といったVFX抜きでは語れない最新の映画の需要をもってしてさえ、カリフォルニア州の幾つかのVFX会社は、地べたに這いつくばる様にして、なんとか生きながらえている状況だ。


その原因は、アメリカの産業界では幾度と無く繰り返されてきた、あるものだ。

より安く働くことの出来る、海の外のライバル達の存在である。


税控除によるアドバンテージのある、カナダのバンクーバーやロンドン("Iron Man2"や"Inception"を制作した所だ。)、それから中国、シンガポール、インドの安い労働力によって、映画製作者達は、数千万ドル単位のお金を制作費から削ることが出来るようになった。

独自の技術や社内専用ツールを使い、アーティストに使い方のトレーニングを施し、たった数社のカリフォルニアの会社が殆んどのVFX仕事を独占していたのは、それほど遠い過去ではなかった。
しかし、今ではテクノロジーの発達に伴い、テクニックは広く普及し今すぐにでも働くことの出来るアーティストの人材は世界中に広まった。

制作費をバジェット内に収めなければならない映画製作者にとって、税控除制度や安い労働力を使うことは、賢いビジネス手法以外の何者でもない。
ただでさえ、VFXは映画制作費の30%から40%を消費し、メジャースタジオの制作であればその金額は五百万ドル以上にも登るのだ。

「この巨大な数字、税控除額等の数字はもはや無視できないものになっている。」

"Jack the Giant Killer"、"Dark Shadows"を始め、幾つかのメジャータイトルをイギリスで製作予定のWarner Bros.のデジタルプロダクション部門のexecutive vise president(*取締役副社長?)であるChris deFarisはこう語る。

カリフォルニアのトップ企業であるDigital Domain, Rhythm & Hues, ジョージルーカスの Industrial Light & Magicは、すでにそれぞれバンクーバー、シンガポール、ムンバイにスタジオを構え、世界中でデータを高速にやり取りできるシステムを構築中だ。
そして、TechnicolorのVFX部門であるMPCはサンタモニカのオフィスに続き、ロンドンとバンクーバーにもオフィスを構えている。

また同時に、インドの会社Tata, Reliance, Prime Focusは逆にロサンゼルスに居を構え、この競争に勝利すべくアーティストのリクルーティングを行っている。

しかし、このグローバリゼーションの広がりは、グローバルなネットワークを築くことの出来ないカリフォルニアの小/中規模のスタジオに多大な影響を与え始めている。


「これらの失業者を生み出すことは、州そのものにとっても大変大きな打撃である。」

こう語るのは、昨年(2010年)12月にその17年の歴史に幕を閉じたSanta MariaのVFXハウス、CafeFXの共同経営者、Jeff Barnesである。
彼らは一年前まで175人のアーティストを有するSanta Monicaオフィスも経営していた。
彼はこう続ける、

「ここで何か手を打っておかないと、かつてカリフォルニアの宇宙産業に起こったことがまた起こってしまうだろう。」

制作費の大きい大作映画と、主要なアーティストへの賃金は対象外の、カリフォルニアの州による映画制作税金控除プログラム(*正式な和訳は不明)は、カリフォルニアで制作をするVFX業界関係者にとって安堵の材料とは程遠いものだった。
その間にも、カリフォルニアはVFX産業に的を絞って税控除を行っていたバンクーバーにその立場を奪われつつあった。

「私たちは、今カリフォルニアのVFX業界が直面している問題を重大に受け止めています。しかし、現段階ではこのプログラムに割ける資金には限りがあるのです。」

California Film Commissionの代表 Amy Lemischはこう語る。

殆んどのVFX会社は5%かそれ以下の細々とした収益でやりくりしている。
つまりひとつの仕事を失う事は、会社そのものを崖から突き落とすのに十分な力を持っているのだ。

CafeFXは"Shutter Island" "Pan's Labyrinth" "Alice in Wonderland"などの大きな仕事を長年手がけてきた。
しかし経済危機が続き、クライアント自体がここにはない税控除にもがき苦しむ中、仕事はついに枯渇していった。

「たとえ、ウチがトントンで仕事を請け負ってでさえ、クライアントは "カナダやUKやオーストラリアに仕事を流せば20%から40%も安くなる"という状況でした。」

とBarnes(CafeFX) は語る。

CafeFXがM. Night Shyamalanプロデュースの映画"Devil"の仕事を受けようとした時も、結局映画はカナダのオンタリオで製作された。

「我々には、この数字に勝ち目はありませんでした。」

と、Barnsは語る。

Barnsはその後も、Disneyの最新作"Tron"の下請けの契約を、ベニスにあるDigital Domainから取ることを考えていた。
しかしDigital Domainは、彼らが持つバンクーバーのオフィス、そしてインドとメキシコの会社にその仕事を委託してしまった。


ハリウッドでは最も古い老舗の一つであるIllusion Artsの2009年の閉鎖は、現地の業界関係者に大きな波紋を呼び起こした。
得意とする背景合成の分野で"Bruce Almighty"や"Night at Museum"を含む数々の映画で力を発揮してきたBill TaylorとそのパートナーであるSyd Duttonは20人近くの従業員を抱え、26年間もの間、この業界で操業してきた。

「私たちは、次々と契約を失っていきました。」

と、現在はコンサルタントとして働くTylorは答えた。

「すべての仕事は、バンクーバー、ロンドン、ブルガリア、そしてインドに流れていきました。」

カリフォルニアを拠点とするアーティストにまだまだ需要はあるが、その多くは職を求めて海外に出てゆかざるを得なくなっている。


AsylumのMcGuinessは現在はシンガポールに拠点を移し、ロンドンの会社であるDouble Negativeの現地のトップとして働いている。
CafeFXのSanta Monica部署であったSyndicateをレイオフされた元VFXスーパーバイザーのBen Grossmannは、イギリスでMartin Scorsese初めての3D映画"Hugo Cabret"に参加している。

彼は今、LAとドイツを拠点とした、5つの国に8つのオフィスを構えるPixomondoのスーパーバイザーとしてたくさんのアーティストを束ねている。
Grossmannは言う、

「私たちは世界で最高の人材を抱えています。しかし彼らは同時に世界で最も高給取りなアーティストでもあるのです…。」


(記事終り)

如何でしょうか?
僕は少し暗い気持ちにもなりました。
が、アーティスト個人の観点から見ると、仕事自体が無いのではなく、カリフォルニアから無くなっているだけなんですね。
僕らアーティスト自身がフットワークを軽くし、どこでも仕事のある場所に移動しながら生活する、という選択肢もあるのかもしれません。
その時の為に、常に自分を準備バンタンにしておくことが、これからアーティストとして生き残る秘訣かもしれません。

ちなみに、この記事にでてくる元Illusion ArtsのSyd Duttonと何人かの従業員は現在Zoic Studiosに手厚く迎え入れられ、僕と一緒に働いています。

追記:
"アメリカVFX業界の危機 - その後"はコチラから。


*この翻訳は、転載自由とします。
転載元(当ブログ)のリンクを明記して頂ければ、どこに転載してもらってもかまいませ
ん。

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2 件のコメント:

  1. すばらしい翻訳ですね。それにこの量、大変だったでしょう、お疲れ様でした。

    今年に入ってLAの仕事は増えてますが以前ほどの勢いがないと感じます。
    身軽な人は、やはり全世界を視野に入れるほうがキャリアアップのためにも良いのかも知れません。
    (実際に、そうしているアーティストもたくさん居ます。)
    まぁ子持ちにはつらいですw

    さて、なかなか厳しい時代ですが、VFX業界にも組合を作るという動きがあり、こちらもそろそろ本格的な動きとなりそうです。
    今更感もあり、吉と出るか凶とでるかわかりませんが、仕事の海外流出は防げないのではないかという見方が強いようです。

    そういえばAsylumの元リクルータが今はMethodに移り、元AsylumのメンバーがMethodに続々入ってきているそうです。
    まだそういう受け口となれるところがあるのはいいのですが、Disneyの大量解雇の話もあり、不安材料はまだまだ一杯ですね。

    返信削除
  2. そうですね、記事ではこうありますが、業界の中にいる者の感覚だと、もちろん残念ながら閉鎖になってしまったスタジオはあるにしろ、2008〜9年頃に比べると去年中半辺りから少しづつ仕事が増えている気はします。

    それでも大きな流れで考えればアメリカ以外に流出していることは確かですね。

    僕はオモシロイ世の中になるんじゃないかと内心ワクワクもしているんですが(笑)

    返信削除

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